お知らせ

新型コロナウイルスワクチンと妊娠について

 新型コロナウイルスのワクチン接種によって不妊になるのではないかという質問を受けることが続きましたので、今回は、ワクチン接種と妊娠についてお話します。
CDC(米国疾病予防管理センター)は一貫して「新型コロナワクチンを含めて、今までに不妊との関連が示されたワクチンは1つもない」と明言しています。しかし、新型コロナワクチンに対しては、SNSを中心に「ワクチン接種によって不妊になる」という内容のコメントが拡散され続けているようです。これまでは、診療の際に相談されても、CDCと同じ見解しか述べられませんでしたが、先週、発表された論文で明確に否定できる材料が整いました。
 ファイザー社製のワクチンをラットに投与した結果についての論文で、妊孕性(妊娠する能力)、妊娠経過、授乳および胎児への影響がないことが証明されました。さらに、妊娠・出産に直接関係のない臓器も含めて隅々まで調べられています。体重換算にすると、人が接種している300倍の量を、妊娠前2回、妊娠後2回の計4回接種した結果ですので、これで異常が起こらないのであれば、我々が接種している量では何の問題もないと言えます。
 これまでにも、ファイザー製ワクチンを接種した妊婦の臍帯血(へその緒の中に流れていた血液)を調べて、新型コロナウイルスに対する抗体があることは報告され、胎児に抗体が移行していると推察されていましたが、今回の論文では、生まれた赤ちゃんの血液内に新型コロナウイルスに対する抗体があることが明らかになりました。つまり、妊娠前もしくは妊娠中にワクチンを接種すると、子供は新型コロナウイルスに対する抗体を持った状態で生まれるということです。乳幼児期にはマスクを付けられませんし、いろいろな場所を触った手を口に入れますので、この1年半、小さなお子さんのいるご家庭では、大変な思いをしながらの子育てになっていることと思います。母親がワクチンを接種することで、新型コロナウイルスから守られた状態で生まれてくるとすれば、大きな安心につながると思います。
 また、妊娠中に新型コロナウイルスに感染した場合、母親自身の重症化や早産のリスク、胎児に対する影響に加えて、非常に特殊な状態での出産となることも知っておいて頂きたいです。新型コロナウイルスに感染している状況で出産を迎えた場合、母親の症状が軽症であったとしても、隔離された状態で過ごすことになります。感染予防の観点から、帝王切開での分娩を選択せざるを得ない場合も多いですし、防護服を着たスタッフに囲まれて出産し、生まれた赤ちゃんとも隔離されます。安心してお産をするには、新型コロナウイルスへの感染を予防することが必要です。
 今回の論文の結果を考えれば、SNSで拡散されている情報はデマであることは明らかです。妊娠・出産を控えた世代の方も、順番が来ましたら、安心して接種して頂きたいと思います。

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