ワクチンによる新型コロナの感染予防効果は、抗体の量に依存することが報告されています。ワクチン接種後、時間の経過とともに抗体の量は減りますので、徐々に感染予防効果は弱くなっていきます。そのため、3回目のブースター接種が推奨されており、現在、2回目の接種から半年が経過した人に3回目の接種を急いでもらっている状況です。
第63回九州リウマチ学会(3月12日~13日)で非常に興味深い発表がありました。九州大学の柏戸先生らの「SARS-CoV2ワクチンのリウマチ性疾患患者における抗体誘導性についての検討」です。リウマチ性疾患の患者さんを対象に、使用している治療薬ごとに、新型コロナワクチン接種後の抗体の量を検討されています。患者さん全体の抗体陽性化率は92.2%で抗体価の中央値は255 U/mLであった一方で、MTXを併用しTNF阻害薬(エンブレル、ヒュミラ、シンポニーなど)を使用している患者さんの抗体価は104 U/mL、ABT(オレンシア)使用患者さんの抗体価は48 U/mL、MMF(セルセプト)使用患者さんの抗体価は3 U/mLなど、治療薬によっては抗体価が非常に低いことが示されました。産生される抗体の量が少ないということは、感染を予防する効果が低いということになります。ワクチンで形成される免疫には抗体以外の経路もありますので、感染予防効果が少なくても、重症化を予防する効果は期待できます。抗体価が低いからワクチンを接種しても意味がないということではありません。しかし、感染予防効果が普通の人よりも弱いことを知った上で、基本的な感染予防対策をしっかりと守って頂きたいと思います。また、そもそもの抗体価が低いので、普通の方よりも早く予防効果が切れますから、3回目の接種を急いで頂きたいと思います。
当院では、薬の作用機序からワクチンの効果が減弱する可能性を考慮し、治療薬によっては一時的に休薬して頂いておりました。休薬によって、久しぶりに関節痛が出た方もいましたが、一時的なものでした。今後も、ワクチン接種時には休薬して頂く予定です。なるべくリウマチの症状が増悪しないように工夫しながら、個別に対応いたします。ワクチン接種の際の休薬についてご不明な点がございましたら、外来でお尋ねください。