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なぜ関節リウマチを発症するのか ~いまわかっていること~

 この20年間で関節リウマチの治療は劇的に進みましたが、「なぜ関節リウマチを発症するのか?」という問いに対する明確な答えは出ていません。従来、考えられていた「元々、関節リウマチになりやすい体質の人が何らかのきっかけ(最も疑われているのは感染症)によって発症する」という仮説は、これまでに積み上げられた知見によって恐らく正しいのではないかとされています。

 関節リウマチの検査項目に抗CCP抗体があります。抗CCP抗体は、たくさんある「抗シトルリン化抗体(ACPA)の一つです。ACPAは関節リウマチを発症する10年前から血液の中にあることが報告されています。ただし、その量は非常に少なく、急激に増加した直後に関節リウマチを発症することが分かっています。今後、ACPA陽性の人を大規模に追跡調査することで、関節リウマチを発症するリスク因子が明らかになってくるかもしれません。

 体内のACPA量が急激に増加するタイミングで、IL-6やTNFαなどの炎症性サイトカインも増加し、活性化していることがわかっています。微量のACPAが体内に存在していても、炎症性サイトカインが多く産生されない限りは関節の炎症は起こらず、関節リウマチの主病体である関節炎は生じません。そこで、ACPAが急上昇し、炎症性サイトカインが活性化するのを止めることができれば、関節リウマチを予防することができるのではないかと考えられており、研究が続けられています。関節炎は生じていない状態のACPA陽性患者に予防的に生物学的製剤を投与する臨床研究では、プラセボ(偽薬投与)群と比較して関節リウマチの発症を抑制したという結果が得られています。実臨床では予防投与はできませんので、すぐに皆さんに還元される情報ではありませんが、関節リウマチの発症メカニズムを考える上では重要な結果だと思います。

 当院では、以前から関節リウマチの診断基準を満たさない場合も、抗CCP抗体陽性の方の経過をみております。大体、高値陽性の方は2年以内に関節リウマチを発症されています。関節リウマチは治療が進んだ結果、早期から適切な治療が行われれば、関節の破壊や内臓の障害などを来さない、コントロールが可能な疾患になっています。抗CCPが高値陽性の場合には、経過をしっかりと観察し、関節炎を生じ始めた時点ですぐに治療を開始することが重要です。

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