今日から日本リウマチ学会が神戸で開催されています。私は学会には参加せず、本日も通常通り診療しておりますが、オンデマンド配信の講演は視聴する予定です。学会の存在意義は新しい知見を学ぶことだと思っています。
リウマチ学会が発行している「リウマチ」という雑誌の3月号を読んでいて、横浜市立大学の斎藤先生が若い先生方に向けて寄稿されているページに目が留まりました。1980年代のリウマチ治療について詳しく書かれておりました。1980年代のリウマチ治療は大変でした。治療薬がシオゾールやペニシラミンしかなく、ステロイドやNSAIDsを使って症状をコントロールするだけで根治はできませんでした。検査も今のような精度のものはなく、現在は当たり前に使っているCRPも調べられず、疾患活動性の確認には血沈という手間のかかる検査をするしかありませんでした。そのような状況でしたので、関節の破壊が進み、多くの患者さんに手術が必要でした。関節の症状以外に全身に生じる合併症も非常に多く、関節リウマチによって命を落とす患者さんも少なくありませんでした。
当時、私は関節リウマチの合併症であるアミロイドーシスの患者さんに対して、リウマチ因子をキレートすることを目的にビタミンB12(シオゾールと同じくSH基を持つ)を投与したり、異常蛋白を取り除く目的で血液の濾過を行ったり、新しい治療法の確立に向けた研究を続け、学会で発表していました。今は当たり前に行われている手術方法が確立したのも1980年代でした。当時、世界中で天才的な外科医が新しい手術方法を発表し、まさに日進月歩の時代でした。私自身、学会に参加することで画期的な新しい手術を学び、学会でお会いした先生方の伝手を頼り、実際に習いに行くこともありました。山本先生に習った人工膝関節手術や山中先生に習った手関節の手術は、後に自分の後輩たちにも教えましたし、多くの患者さんの生活を改善したと思います。
治療の選択肢が少なく、大変な時期ではありましたが、次々に誕生する刺激的な新しい治療法を勉強することができ、医師としての人生において非常に有意義な時間だったと思います。
お知らせ
院長ヴォイス2024.04.18