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自己免疫疾患の増加について

 日本と違い諸外国では電子カルテシステムや保険情報の活用によって大規模なデータを簡単に集めることができます。その大規模データの集積によって、一人一人の患者さんを診ているだけでは分からない全体の傾向や特徴が分かります。以前から指摘されていましたが、近年、世界的にリウマチ性疾患が増加しています。診断の精度が上がったことで、以前であれば診断されなかった患者さんも的確に診断されるようになったことが大きいですが、新型コロナウイルス感染症の影響もあることが明確なデータとして出てきています。
 ウイルス感染後に関節リウマチをはじめとする自己免疫疾患を発症することは数十年前から指摘されていましたが、新型コロナウイルス感染症のように全世界で一斉に大量のデータを集められたことはありませんでした。まずは現場の医師が新型コロナウイルス感染症後に自己免疫疾患を発症する方が多いと感じ、小規模なデータが蓄積されていました。その後、そのデータを元に立てた仮説を検証するべく、いくつかの大規模データの解析が行われました。いずれも数百万人規模の患者情報を解析しており、新型コロナウイルス感染症罹患後には様々な自己免疫疾患の発症率が上昇することを明らかになりました。ちなみに、ワクチン接種による影響を除外するために、ワクチン未接種者のみを対象として解析されています。その結果、感染の3~15カ月後に自己免疫性疾患を発症する確率が42.6%高いことや、以前から関節リウマチの発症に関与が疑われていた既知のウイルス病原体と比較して発症する自己免疫性疾患が多岐にわたっており、あらゆる種類の自己免疫性疾患のリスクが高くなることが分かりました。
 新型コロナウイルス感染症罹患後にどのようなメカニズムで自己免疫性疾患を発症しやすくなるのかの詳細については、様々な仮説が立てられて検証中です。現時点では「新型コロナウイルスに感染すると様々な自己免疫疾患を発症するリスクが著しく高くなる」という全体の傾向をつかめただけで、一人一人の患者さんに役に立つわけではありません。しかし、今後、感染者が自己免疫性疾患を発症するメカニズムが明らかになれば、自己免疫疾患の予防や早期治療につながり、多くの方にとって福音となると思います。
 「自分は既に関節リウマチだから関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、新型コロナウイルス感染後は免疫システムの変化によって、SLEやシェーグレン症候群などの関節リウマチ以外のリウマチ性疾患、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、膵臓のインスリンを出す細胞が破壊されて自分ではインスリンを作れなくなる1型糖尿病などあらゆる種類の自己免疫性疾患が起こり得ます。複数の自己免疫疾患を抱えることになる可能性がありますので、なるべく感染しないように基本的な感染症予防対策は継続された方が良いと思います。

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